こんにちは。最近話題になっている宇野維正さん著「1998年の宇多田ヒカル」という本を買って読んでみました。1998年という宇多田ヒカル、椎名林檎、aiko、浜崎あゆみといった歌姫が一気に登場した特別な年を中心にJ-POPの歴史について書かれています。私も読んでみた感想を書いてみますね。
「1998年の宇多田ヒカル」に書かれていること
あまり詳しくブログに書いてしまうと本を読む楽しみが減ってしまうと思うので、ネタバレしない程度に書きますね。章立てとしては、
第1章 奇跡の1998年組
第2章 1998年に本当は何が起こっていたのか?
第3章 1998年の宇多田ヒカル
第4章 椎名林檎の逆襲
第5章 最も天才なのはaikoなのかもしれない
第6章 浜崎あゆみは負けない
第7章 2016年の宇多田ヒカル
となっています。4人それぞれに章が割り振られていて、音楽ジャーナリストの著者によって色々と語られています。そして、2016年の宇多田ヒカルという最後の章ではこれからのJ-POPへの心配も書かれています。
宇多田ヒカル、椎名林檎、aiko、浜崎あゆみの4人の歌姫のことだけが書いているのかなと思っていたのですが、それまでのJ-POPやアイドルの歴史のことや、小室哲哉のブームが宇多田ヒカルの登場によって衰退していったことなども書いてあって読み応えがありました。
本のタイトルには宇多田ヒカルだけが入っていて、本の帯には宇多田ヒカル、椎名林檎、aiko、浜崎あゆみの4人の名前が並列に書かれています。ですが、本の内容的には宇多田ヒカル、椎名林檎、aikoの3人がメインで、浜崎あゆみは比較対象として書かれているような感じでした。音楽ジャーナリストである著者の好みも出ていて、浜崎あゆみは他の3人ほどではないみたいなので、あゆファンが読むとちょっと嫌な気持ちになるかもしれません。実際に浜崎あゆみは残りの3人とは毛色の違うアーティストだと思うので仕方のないところもありますが。。。
「1998年の宇多田ヒカル」を読んでみた感想
一応、このブログの中の人はaikoファンなので、まずはaikoについて書かれているところから、感想を書いてみますね。
aikoのこと
aikoについてですが、デビュー前に同じコンテストに椎名林檎も出てたこととか、大阪でラジオのDJをやっていたこととか、ポニーキャニオンに入って本人の作曲ではない「あした」でデビューすること等、初期の話は結構詳しく書いてありました。aikoファンなら知っていることも多いかとは思いますが、華々しくブレークした宇多田ヒカル、椎名林檎、浜崎あゆみと比べると地味な感じもありましたよね。
この本に書いているように、他の人たち(特に宇多田ヒカルと浜崎あゆみ)が矢面に立っていてくれたからこそ、aikoが比較的自由に活動してこれたというのはあったと思います。同時期にデビューした人だと、宇多田ヒカル、椎名林檎、浜崎あゆみの3人の他に、MISIA、モーニング娘。、鈴木あみなどもaikoより売れていましたし。
1998年前後に現れた彼女たちのブームが落ち着いた後でも、後から登場してきた倖田來未、大塚愛、YUI、いきものがかりなどがaikoよりも売れていて、うまくaikoの隠れ蓑になっていてくれてたんだなと思いました。
ですが、近年は女性アイドルブームもあって、(西野カナ以外に)歌姫的な人があまり伸びてないと思います。ギター女子なんて言われている人たちもいるけどブレークしてないし・・・。そんな中でaikoがいつの間にか先頭に浮かび出てきてしまいそうな気がします。
aikoには変なプレッシャーを受けずに今までどおり活動してほしいので、他の女性アーティストの皆さまには頑張ってほしいです。西野カナがいてくれて良かったとaikoも思っているかもしれませんね笑。miwaについては某ゲスな人のように音楽を舐めているとまでは言わないけど、本格的な女性シンガーソングライターが登場したと思っていたら悪い意味でアイドル寄りになってしまって、少しがっかりしたというのが私の正直な気持ちなので、ここから巻き返してきて欲しいです。いきものがかりの聖恵ちゃんはaikoのことが好きみたいですが、結婚しないところまで見習わなくていいよ~。もう30歳過ぎたんでしたっけ、早くいい人を見つけてくださいね。
aikoはCDシングルでわざと1位を取らないように見えてた時期もありましたが、もしかしたら、aikoも売れようと思って一生懸命活動してたけど、たまたまトップまでは上り詰めることができなかっただけなんじゃないかと思う時もあります。リリース前のプロモーション活動を見てるとCDを売ろうといつも相当頑張ってますし。aiko(と運営)はブランディングをかなり計算して活動しているのか、好きなようにやっていたら結果的に現在の状況になっただけなのか、私もよくわからなくなってます。
あと、男子女子そうでない人のコールアンドレスポンスについても書かれていました。Perfumeのあ~ちゃんはaikoのことが好きでコールアンドレスポンスを真似しているのは、Perfumeファンとaikoファンはよく知っていることだと思いますが、「そのコールアンドレスポンスを成り立たせているのは男女比ほぼ半々の空間で、女性アイドル/女性アーティストの理想とするところ」だという記述がありました。
aikoのライブの男女比はほぼ半々というよりも、3:7~4:6ぐらいだというのは置いておいて(Perfumeはライブに行ったこと無いのでよくわかりません)、その絶妙な観客のバランスが男子女子そうでない人を成り立たせているというのに私も納得しました。しかも、aikoは男子女子そうでない人の後に、10代、20代、30代、・・・といった年代別のコールアンドレスポンスをするんですけど(小学生、中学生、・・・の場合もあります)、10代~30代を中心として幅広い世代からの歓声が上がっているんですよね。
aikoのライブは、aikoに憧れている若い女子が多くて、男ばっかりでむさ苦しいということもないのに、私のようなおっさんが浮いてしまうこともないという、雰囲気が良くて明るく楽しい現場になっています。aikoのファン層が理想的だというのは私も実際に体感しているところです。
aikoが「ロッキング・オン・ジャパン」の表紙インタビュー(2002年9月10日号)に1度だけ出た時について、「取材前にも取材後にも方針の違いで散々揉めた挙句、それっきりになった」と書かれていました。どういう風に揉めたのかもう少し書いて欲しかったなぁ。aiko運営がどういうことを言っていたのか気になる。
そのようにaikoが音楽ジャーナリズムとは離れたところにいることも書かれているのですが、個人的には手品のネタばらしみたいになってしまうと嫌だし、色々と批判されたり、その期待から高すぎる要求を突き付けられるのもちょっと見たくないと思うところです。音楽通の人や同業者からも高く評価されているらしいけど、気さくなおばちゃんが変なメロディーとリズムの歌を歌ってるなぁということでいいです。ライブのチケットがこれ以上取りづらくなったら困る!
aiko以外のこと
aiko以外のことは知らなかったことも多かったです。宇多田ヒカルと椎名林檎の仲が良くて結構絡みがあったのには驚きました。特に宇多田ヒカルは孤独なアーティストだという先入観があったので。
椎名林檎が東京オリンピックに向けて、日本の音楽の質について憂いていることが書いてありました。世界に日本の文化を見てもらえる滅多にない機会ですし、恥ずかしくない物にしたいですよね。芸能界のドロドロとした側面も見える紅白歌合戦にaikoが落選してから、代わりじゃないけど椎名林檎が出演しているところにも、彼女の気持ちが現れているのかもしれません。
浜崎あゆみについては近年は本業よりもゴシップ的なネタが取り上げられがちですけど、精力的にライブとリリースをし続けているんですよね。個人事務所の宇多田ヒカルと椎名林檎とaikoとは違って、上場企業のavexを支えている立場による苦悩もあったようです。
初期は内省的な暗い歌詞が共感を呼んでいて私も当時はaikoよりもあゆが好きだったのですが、ある時から明るく健康的な歌詞や曲になってきましたよね。失礼ながらゴーストライターが変わったのかなと最近思っていたのですが、宇多田ヒカルとアルバムが同じ発売日で対決したあたりで心境の変化があって、それが楽曲にも現れてきていたんですね。私もこの本を読んで浜崎あゆみに対する印象が変わりました。
最後の章では「2016年の宇多田ヒカル」ということで、宇多田ヒカルがもうすぐ復活しそうだけど、休んでいた6年間で環境がガラッと変わってしまっているので、どういう活動になっていくのか不安や心配について書かれています。
確かに今はCDの時代が終わってきていて、ライブ・フェスの時代になってきていますよね。宇多田ヒカルは自分で作詞作曲だけでなくアレンジまで手がけている音楽家だけど、ライブの回数は少なかったそうです。まさにCDの時代のアーティストだったのかと思います。
この本で取り上げられてる他の3人はライブも得意なんですよね。椎名林檎はバンドも合わせて良質な音楽を聴かせてくるし、aikoはMCも上手くてライブ会場全体で一体感のあるライブをしているし、浜崎あゆみはダンサーも多くてショー的な要素があるライブですよね。
そんな中で宇多田ヒカルが復活してどのような活動をするのか、どれくらいCDが売れるのか、心配も多いところです。もし、宇多田ヒカルがあまり売れなかったら、1998年からの歌姫の時代は終わってしまうかもしれません。かといってアイドル人気もピークは過ぎて落ち着いてきているし、これからのJ-POPはどうなるんでしょうか。ただ、音楽を聴いている人の数が減っているようには見えないので、そこまで悲観的になることはないのかもしれませんね。
終わりに
「1998年の宇多田ヒカル」は、J-POPの大きな転換期とも言える1998年に登場してきた4人の歌姫のことを中心にして、その歴史を記録しておこうという本になっています。実際に1998年に音楽を聴きながら過ごしてきた私にとってみても、こうやって本として記録しておく意義は大きいなと感じたところです。
今は2016年なので1998年はもう18年も前になるんですよね。高校生や大学生ぐらいの人は物心が付く前で記憶が無かったり、まだ生まれてないような年だと思います。当時の音楽業界がどんな感じで、現在にどうつながってきているかを知るというのは興味深いことだと思うので、音楽が好きな若い人たちに読んでほしい本です。